今回は、
株式における先物取引
について分かりやすく解説していきます。
先物取引とは
先物契約とは、
”未来の特定の日や期間にあらかじめ決められた価格で商品や金融商品を売買する契約”のことです。
先物取引の対象は、株式などの金融商品以外にも金、原油、穀物などで行われています。
例えば、
輸入業者Aが卸売業者Bに2倍の価格で売れるコーヒー豆を1kg600円で輸入する
という例を見てみます。
事例①:コーヒー豆価格下落
- 輸入業者Aがコーヒー豆1kg600円で買付
- 卸売業者Bにコーヒー豆を1kg1,200円で売る契約
- 運輸中に市場価格が下落し1kg500円になる
- 到着後、卸先Bに1kg1,200円で売却
輸入業者A:200円の得
卸売業者B:200円の損
輸入業者Aは現物だと500円の2倍である1,000円でしか売れないコーヒー豆を1,200円で売れたため、200円の得をしたことになります。
一方で卸売業者Bは、現物だと1,000円で買えるコーヒー豆を先物取引により1,200円で購入したため、200円の損をしたことになります。
事例②:コーヒー豆価格上昇
- 輸入業者Aがコーヒー豆1kg600円で買付
- 卸売業者Bにコーヒー豆を1kg1,200円で売る契約
- 運輸中に市場価格が上昇し1kg700円
- 到着後、卸先Bに1,200円で売却
輸入業者A:200円の損
卸売業者B:200円の得
輸入業者Aは現物だと700円の2倍である1,400円で売れるコーヒー豆を1,200円でしか売れなかったため、200円の損をしたことになります。
一方で卸売業者Bは、現物だと1,400円するコーヒー豆を先物取引により1,200円で購入できたため、200円の得をしたことになります。
このように、先物取引は市場価格がこの先上がろうが下がろうが、市場価格の変化によって売り手か買い手のどちらかが得をして、どちらかが損をすることになります。
また、先物取引はゼロサムゲーム(参加者が一定の資産を奪い合う(総和がゼロになる)状況)であると言えます。
株式における先物取引
株式における先物取引とは、
”市場価格の変化によって利益損失が出るという先物取引の特徴を利用し、差額で利益を得ることを目的とした投機取引”です。
株式における先物取引には、大きく2つの特徴があります。
- 株式市場の違い
一般的に売買が行われる現物取引、信用取引は現物市場で行われています。
ニュースなどでよく出てくる日経平均株価も現物市場のデータから算出されています。
一方で先物取引は、先物市場という現物市場とは違う市場で取引されています。
日経平均先物とは、「日経225先物取引」と呼ばれる日経平均株価を対象とした先物取引です。
日経平均先物価格は、投資家が予測した未来日の日経平均価格と捉えることができるため、今後の日経平均価格の推移を予測する材料の1つとして利用されることがあります。
先物取引は株式を実際に手にすることがありません。
株式を安く手に入れることが目的ではなく、あくまで差額で利益を出すことが目的だということです。
そのため、先物取引の場合は購入した株式は期限内に売却する必要があり、期限になると自動売却となります。
先物取引の例
甲社の株(株価5,000円)を投資家Aが買い、投資家Bが売りで先物取引を行った
という場合を例に見てみます。
事例①:甲社株価格下落
- 投資家Aが1週間後に甲社株5,000円で買い
- 投資家Bが1週間後に甲社株5,000円で売り
- 甲社株価5,000円→4,500円に下落
投資家A:500円の損失
投資家B:500円の利益
投資家Aは4,500円の甲社株を5,000円で買ったことになるので、差し引きがー500円となり、500円の損失となります。
一方で投資家Bは、4,500円の甲社株を5,000円で売ったことになるので、差し引きが+500円となり、500円の利益となります。
事例②甲社株価格上昇
- 投資家Aが1週間後に甲社株5,000円で買い
- 投資家Bが1週間後に甲社株5,000円で売り
- 甲社株価5,000円→5,500円に上昇
投資家A:500円の利益
投資家B:500円の損失
投資家Aは5,500円の甲社株を5,000円で買ったことになるので、差し引きが+500円となり、500円の利益となります。
一方で投資家Bは、5,500円の甲社株を5,000円で売ったことになるので、差し引きがー500円となり、500円の損失となります。
先物取引と信用取引の違い
先物取引は簡単言うと、未来日の取引の約束です。
一方で、信用取引は今取引をするための金額を第3社(証券会社)から借りるということになります。
先物取引と信用取引 | 先物取引 | 信用取引 |
---|---|---|
市場 | 先物市場 | 現物市場 |
資金の貸し借り | ない | ある |
先物取引とCFDの違い
先物取引とは本来、原油やコーヒー豆の貿易や農作物など、価格が頻繁に変動するものの取引においてリスクを軽減するための取引手法の意味です。
一方で、CFDとは”差金決済取引”全般のことを指します。
株式の先物取引は言うなれば、投資家が先物市場で株式の先物取引をCFD(差金決済取引)で行っているということになります。
先物取引のメリット
上昇下降どちらの局面でも利益を得ることが可能
先物取引は株価が上昇局面でも下降局面でもどちらでも利益を出すことが可能です。
株価が上昇局面では買いポジション、下降局面では売りポジションを持つことで利益を出すことができます。
レバレッジ効果
レバレッジとは、証拠金とすることで少ない資金で大きな金額を動かすことができる制度のことであり、それにより資金以上に大きな利益を出すことが可能になります。
先物取引の多くは証拠金が必要となり、証拠金を預けることでレバレッジを掛けることが可能です。
レバレッジが可能な金融商品すべてに言えることですが、レバレッジを掛けることで資金以上に大きな損失を被る可能性もあります。
先物取引のデメリット(リスク)
専用口座開設
現物取引や信用取引を行う証券口座とは別になるため、証券会社で口座開設の手続きのための申し込みや本人確認書類の用意が必要になります。
NISA口座で取引できない
先物取引はNISA口座での取引はできません。
NISAとは、金融機関で開設した口座で購入した株式や一部の投資信託などにおいて、株式売価による譲渡所得、配当金による配当所得が非課税になる制度です。
先物取引で得た利益は雑所得に区分されるため対象外です。
先物取引の所得は雑所得の分離課税(他の所得とは別に計算される)となり、税率は20.315%(所得税15%+住民税5%+復興特別所得税0.315%)です。
マージンコール
マージンコールとは、
”相場の変動により証拠金が一定の水準を下回った場合、追加証拠金を預けなければいけないという先物取引のルール”です。
追加の資金を用意できない場合はポジションを強制的に閉じられる、買いも売りもその時点で強制的に決済されることになります。
先物取引は確定申告が必要
先物取引で得た利益は確定申告が必要になります。
特定口座やNISA口座のように証券会社が損益計算し源泉徴収によって納税ができるような制度がありません。
なお、雑所得は年間の利益が20万円以下であれば確定申告が不要のため、先物取引の利益が年間20万円以下であれば確定申告は不要です。
しかし、年間の利益が20万円以下であっても各市区町村の役所で住民税の申告が必要になります。
まとめ
最後までお読みいただきありがとうございました。
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