自民党が「金融所得による保険料アップを検討」のニュースをわかりやすく解説|金融所得とは何か、NISAは罠だったのか

タケ

この記事では、

”金融所得による保険料アップ”

のニュースについて

わかりやすく解説していきます

 

 

金融所得による保険料増額の報道

2024年4月25日。

WEBニュースなどに以下の見出しのニュースが並びました。

「自民党が金融所得で保険料増額を検討」

ちょうどその頃は日経平均株価が2024年新NISA始まって以来の安値に落ち込んでいたということもあり、

「政府が投資を推奨していたのは罠だったのか⁉」

という、投資家から不満の声が上がりました。

また、小倉優子さんの

「NISAには何か裏があるのでは」

という以前の発言が再度注目されることにもなりました。

 


もし、検討されている保険料アップが現実となった場合、具体的にどのようになるのかを考えていきましょう。

 

 

金融所得について簡単に説明

まず前提となる

「金融所得」

についておさらいです。

金融所得は以下の2つに分けられます。

  1. インカムゲイン
  2. キャピタルゲイン

インカムゲインは資産を保有することで得られる利益です。

株式投資の配当金、投資信託の分配金、不動産投資の家賃収入がそれにあたります。

ちなみに、積み立て投資信託(分配金再投資型)は配当金が0とみなされます。

キャピタルゲインとは”売買差益”のことです。

例えば株式投資の場合、株式を売却したときに買った時よりも高い金額で売れた場合、また不動産投資の場合は、不動産を売却したときに購入時より高く売れた場合、その差額が所得とみなされます。

ちなみに、本案で議論の対象となっている金融所得は具体的に何になるのかは明確になっておらず、生命保険の返戻金なども含まれるのかは不明です。

 

 

保険料の”保険”とは

一般的に給与から引かれる”保険料”とはいったいどのようなものでしょうか。

具体的に見ていきます。

保険の種類

保険料は以下の6種類に分かれます。

  • 健康保険
  • 国民健康保険
  • 厚生年金保険
  • 雇用保険
  • 労災保険
  • 介護保険

それぞれ次のような目的で国が徴収しています。

健康保険 企業や団体に所属している労働者とその家族が病気やケガによって治療を受ける医療費の負担軽減
国民健康保険    被用者保険等の適用者以外の全ての国民を対象とし、病気やケガによって治療を受ける医療費の負担軽減
厚生年金保険 いわゆる「年金」。労働者が老齢、障害又は死亡した場合に保険給付を行う
雇用保険 労働者が失業や育児・介護のために休業した場合、また自ら教育訓練を受けた場合に保険給付を行う
労災保険 労働者が業務や通勤に起因する病気や怪我に対して必要な保険給付を行う
介護保険 要介護状態となった高齢者が必要な保健医療や福祉サービスを受けるため保険給付を行う

 

健康保険、厚生年金保険、雇用保険、労災保険を総じて”被用者保険”と言います。

被用者保険は、加入者と所属する企業などが折半して保険料を支払うという特徴があり、そのことを労使折半と言います。

また、健康保険、国民健康保険、介護保険を総じて”社会保険”と言います。

分かりやすく図に表すと以下のようになります。

 

保険の金額

年間で支払う保険料の金額は、居住する市区町村、扶養や介護の事情などにより細かく設定されています。

共通しているのは、所得額に比例して支払う保険料が高くなるということです。

つまり、受けられる恩恵は全員同じですが収入の多い人ほど負担が高くなる富の再分配の形をとっています。

 

 

金融所得による保険料増額について解説

どの保険料が上がるのか

現在自民党が金融所得による負担増を検討しているのは、

  • 国民健康保険
  • 介護保険

の2つです。

つまり、上の図の緑色の部分のみが対象となっています。

被用者保険(健康保険・厚生年金保険・労災保険・雇用保険)については現在検討の対象にはなっていません。

 

なぜ保険料増が必要なのか

これによる政府の目的は大きく2つと言われています。

  • 医療費の財源確保
  • 不公平性の解消

医療費の財源確保はなんとなくわかりますが、”不公平”とはどういう意味なのでしょうか。

それは、確定申告をする人としない人の不公平性です。

株式投資を行っている人や団体は、確定申告をする場合としない場合があります。

確定申告を行うと、

  • 損益通算できる
  • 手間がかかってしまう

などの特徴があります。

大きな金額を扱う企業投資家などは損益通算が重要になるため、確定申告を行うことが多いです。

Point

損益通算

 

損失と利益がを総合して所得を算出すること。

例えば、

A株:+100万円

B株:-50万円

C株:-50万円

の損益となっている場合、確定申告を行わないとA株の+100万円が課税対象となる。

一方で確定申告を行い損益通算すると、ABC株総合で±0となるため、税金はかからない。

 

一方で株式投資には、NISA口座、特定口座を利用することで確定申告が不要になる制度があります。

これは投資家のかわりに証券会社が申告を行ってくれるため、投資家の確定申告が不要になるという制度です(住民税の申告は必要)。

確定申告を行わないと、

  • 簡手間がかからない
  • 保険料がかからない
  • 損益通算ができない

という特徴があります。

自民党が理由として掲げる不公平性の解消とは、確定申告を行わない投資家は金融所得に応じた保険料を納めていないためそれを是正するということです。

分かりやすく言えば、

Aさん:給与収入1,000万円

Bさん:給与収入500万円+投資収入500万円

の場合、2人は同じ収入があるのにも関わらず、支払う保険料はBさんの方が安い(年収500万円相当分のみ)ということになっているため、それを解消するということです。

 

 

どのような人に影響が出るのか

国民健康保険加入者

もし検討されている案がそのまま現実となれば、一番影響を受けるのは国民健康保険加入者です。

例えば、

  • フリーランスや自営業者
  • 定年退職を迎えた方々
  • FIRE(早期リタイア)した方々

が得ている金融所得によって保険料の負担が増えることになります。

 

iDeCo

iDeCoにも影響が出る可能性があります。

iDeCoは60歳以上になるまで受け取ることができない積み立て投資です。

つまり、今は国民健康保険に加入していなくても、受取時には定年退職し国民健康保険加入者となっている場合があります。

その場合は、受取額に応じた保険料が徴収されることになってしまいます。

 

FIRE

また、金融所得を収入のメインとしている人、いわゆる”FIRE勢”にも影響が大きいと言えます。

FIRE、あるいはサイドFIREをした人々はその多くは正社員として企業に属しておらず、国民健康保険の加入者となっているためです。

さらに、FIREとは収入のメインを金融所得にすることであり、保険料が課せられることで増える負担はかなり多くなります。

 

 

対象外の人も今後注意が必要

2024年現在では、サラリーマンなど企業に正社員として属している方(被用者保険加入者)は本案の対象外となっています。

しかし、高齢化問題解決の糸口が見えていない現在の日本にとって、今後の医療費の財源確保は間違いなく深刻化してくるでしょう。

もしそうなった場合、被用者保険加入者の方にも金融所得に応じた保険料の増額の波が押し寄せてくることが十分に考えられます。

 

 

投資はしない方がいいのか

結論から言えば、本案が実現したとしても「投資はしない方がいい」とはなりません。

なぜなら、これは”給与所得であれば徴収されてた保険料が、金融所得では徴収されていなかった”ということの是正でしかないからです。

言い換えれると、

「支払う保険料が増えるから今より給料を上げてほしくない」

と言っているのと同じことです。

ニュースやネット記事は目を引くためにセンセーショナルでキャッチーな見出しをつけることもありますが、それらに振り回されずに、正しい情報から冷静な判断をする必要が重要です。

もちろん、投資=ノーリスクではないという前提を忘れないようにしましょう。

 

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まとめ

  • 金融所得に応じた保険料を徴収する案が検討されている
  • 対象者は現在のところ国民健康保険と介護保険であり、被用者保険は検討の対象にはなっていない
  • 特別高い保険料が設定されるのではなく、給与と同じ条件になるだけ

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

 

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